素肌美人になるための皮膚科学
柔らかくてすべすべした赤ちゃんの肌は、とてもキメ細かくマシュマロや羽二重餅のようです。赤ちゃんは新陳代謝が盛んなので、肌も新しい組織がつぎつぎに生まれているからです。一方、シワはその人の年輪ともいわれますが、ビタミンやホルモンの不足、細胞の老化により皮膚の結合組織が弾力を失って硬くなるからです。また、シミやソバカスは、紫外線の害から身体を守るためにつくる褐色のメラニン色素の蓄積です。
素肌を若返らせ、瑞々しく保つことができれば、お化粧の伸も良くなり、鏡に向かうたびウキウキするばかりか、人前に出ることが楽しくなり仕事もはかどります。素肌美人への近道は、赤ちゃんのように皮膚の新陳代謝を活発にすること、バランスの良い食事と内蔵を健康にして皮膚に十分な栄養を行き届かせることからはじまります。
そこで、先ずお勧めするのはビタミンCです。ビタミンCは皮膚細胞の結合組織に弾性を持たせるコラーゲンの合成を促す膠原作用、メラニン色素の生成を抑える美白作用、体の組織を錆びつかせる原因の活性酸素を無害にする抗酸化作用が知られています。また、緩下作用があるため便秘を防いて腸の働きを整えてくれます。ほかにビタミンB群、E、カルシウムも素肌の美容に欠かせない大切な栄養素です。
ビタミンCといえばレモンやオレンジ等の柑橘類、グアバ、アセローラ、イチゴなどの果物に多く含まれています。しかし、果物は糖質も多く、たくさん摂ると冷え性やダイエットを気にする方も多いでしょう。そのような方はパセリやキャベツ、ピーマン、ブロッコリーなど緑の濃い野菜を食べ、お茶を飲むようにします。できれば露地栽培もののほうが、直射日光をたっぷり浴びて病虫害にうち勝つためのビタミンCをより多く含んでいます。でも、野菜も苦手で十分な量を食べることができない人もいます。そのような方は、少しでも旬の野莱や果物を食べるようにし、不足分をビタミンCサプリメントで補うことをお勧めします。
美容効果を期待してプロビタCを愛飲している方も大勢います。プロビタCは、安定・持続型ビタミンC(AA-2G)が2004年に食品添加物(栄養強化剤)に承認されてビタミンCサプリメント(保健機能食品、栄養機能食品)として商品化されました。その10年前(1994年)にAA-2Gが医薬部外品(美白用化粧品主剤)に承認され、その優れた特性(安定・持続性、取扱の容易さ、広範な応用性、安全性)から、今ではビタミンCを成分とする本物の化粧品の大半に使われています。
ここで美容の対象となる皮膚の役割をもう少し科学的に理解して、素肌美人になるもう一つの目的を考えてみましょう。皮膚は、微生物などが体内に入り込むのを防いだり、水分が漏れないようにするバリアとして機能するだけでなく、皮膚科学の研究成果として、環境の変化に応じて免疫系、内分泌系や中枢神経系と密接に関係して様々な情報を発信していることが知られています。皮膚はそれ自体が独自に感じ、考え、判断し、行動しているというのです。その巧みなシステムを担っている物質は中枢神経系で記憶や学習に寄与している物質と同じ成分です。このことは発生段階で皮膚表皮と中枢神経系が同じ外胚由来の機関であることを考えると理解できます。まさに皮膚は外部環境のセンサーであり、脳のように考える臓器(神経をつかさどるもう一つの脳)と言えます。成人の皮膚面積は1.6㎡、厚さ1.4~4mmとすれば重さは約3kg(皮下組織も加えると約9kg:体重の14%)にもなります。皮膚は、約1.4kgの脳、1.2~2kgの肝臓より圧倒的に大きなもう一つの臓器 “外臓”と考えることができます。東洋医学では鍼灸やマッサージのように皮膚への施術が多いこともうなずけます。
また、皮膚の表裏は体内を基準に-100mVの電位差があるパワフルな電池です。この電位差は感情や気分によって変化しています。ウソ発見器はこの現象観測を応用しています。また、鍼灸治療は人体の部位間(経穴とそれらを結ぶ経路)に電位差を発生させる(電流を流す)ことによって生体防御機構(免疫系、神経系、内分泌系、代謝系、抗酸化系、細胞修復系など)を刺激して必要な臓器を機能させる術といえます。
皮膚細胞を動作させるイオンポンプの性能が劣化すれば電池切れ状態になります。これが老人のカサカサ肌の原因です。瑞々しい皮膚は角層の下にカルシウムイオンが高濃度に分布しています。老人性乾皮症、乾癬、アトピー性皮膚炎では細胞の内外に栄養分や老廃物を出し入れするイオンポンプやイオンチャンネルの働きが鈍くなってイオンの偏在がなくなり、表皮にカルシウムイオンが一様に分布して電位差が下がり、バリア機能が低下して障害が起こります。
まだまだ、皮膚科学で明らかにすることは沢山ありますが、素肌美人になることの大切さを知るために少しでもお役に立てばと思います。ビタミンCを上手にとって、肌の健康を保ちたいです。
(スタッフ:瀬崎 勝二)
[参考] 岩波科学ライブラリー112「皮膚は考える」傳田 光洋著(資生堂LSRC)2005.11.2
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